本年度においては、わが国の確定決算基準の見直し動向についての議論を調査し、論点整理を中心に行った。この一連の調査の結果、確定決算基準の見直論の背景には、IAS(国際会計基準)に準拠した新たな会計基準の設定(特に資産・負債の時価評価対象の拡大、税効果会計の全面的導入の動向)、平成10年度の法人税法の大幅改正、連結納税制度導入の要請などがあることが明らかになった。確定決算主義反対論者の意見は、これらの動向をふまえ、今後、わが国では個々の会計処理に関する逆基準性がさらに強まる傾向があるため、米国の会計制度のように、商法と税法とを完全に分離した体制に移行すべきであるとの主張に集約された。しかし一方で、確定決算主義を放棄するにあたっては、税法は自己完結的に課税所得計算に関わる全項目について規定する必要性があるが、これらの論点について具体的な提案はほとんど見受けられないのが現状であった。法人税法固有の会計規定を設けるにあたっては、課税の公平性の要請が強い法人税下で適正な時価評価基準を設けることが可能かといった論点や、法人税法においける期間損益厳格化に応じるための処理方法などが問題となると考えられる。 平成11年度においては、確定決算基準を見直し論の論点整理を中心に行ったが、平成12年度においては、さらに連結納税制度、税効果会計などの制度との関連性を研究するとともに、具体的に21世紀のわが国の企業会計制度における確定決算主義の意義について明らかにする。
|