位相的弦理論の演算子代数、あるいはそれらの分配関数(プレポテンシャル)の研究から発見された量子コホモロジー(Gromov-Witten不変量)は、KontsevichとManinによって、その数学的な公理化が行われ、また安定写像のモジュライ空間を用いた数学的な定義も出来上がっている。現在、全ての種数で、量子コホモロジーを具体的に決定することが一つの課題となっている。 この研究では、有理楕円曲面のプレポテンシャルを全ての種数で具体的に決定する手法(modular anomalyequation)を見い出し、その解に現れる準保型型式の系統的な解析法を整備した。有理楕円曲面のGromov-Witten不変量は、アフィン・ワイル群の作用の下で不変であることが知られているが、この作用によるGromov-Witten不変量の軌道分解の様子を明らかにした。 また、海外から研究者A.Klemm(米国Princeton大)とE.Zaslow(米国North Eastern大)を招聘しGromov-Witten不変量の代数幾何学的な導出について議論を行なった。とくに、高い種数のGromov-Witten不変量を曲線のモジュライ空間上に考えるLefschetz作用と結び付けて説明する、Gopakumar-Vafaの予想と検証について詳細な議論を行なった。有理楕円曲面の場面に、modular anomaly equationから得られるGromov-Witten不変量を、Gopakumar-Vafaの予想と結び付けて幾何学的に導出し説明することを次年度の研究課題として引き継いでいく。
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