本年度は量子ミラー対称性とシンプレクティック多様体・特異点との関りについて主に研究していた。 一例として、複素偶数次元にのみ現れるシンプレクティック特異点を考える。これは余次元2の部分では、商特異点であってしかも標準因子を変えない(crepantな)特異点解消を持つことが知られている。しかし余次元が高い部分については必ずしもそうではない。例えば、商特異点で余次元が3以上のシンプレクティック特異点はcrepantな特異点解消を決して持たないことが知られている。 この結果はミラー対称性では、余次元3以上の商特異点は自明でない変形を持たないことに対応しており、超ケーラー回転の手法により示すこともできた。 Calabi-Yau多様体を実多様体あるいはカテゴリカルな対象に広げることによって、双有理変換と複素構造の変形による2種類の特異点解消の空間を実現できないかなど、研究を続けている。 6月には京都大学数理解析研究所において、関連する短期共同研究を主催し、国内外の研究者による研究発表とdiscussionを行った。 また、10月には名古屋大学の向井茂氏の最近の研究成果を中心にした研究集会を開催し30数名の参加者を集めた。
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