研究概要 |
一般の代数体上で定義された楕円曲線のさまざまな不変量を計算するプログラムの開発を行った.とくにreductionを調べるTateのアルゴリズムや,Weierstrass divisorを計算するプログラムを数論ソフトウェアのKASH上に実装した.これによって,既存のソフトウェアでは計算するのが難しかった,大きな代数体上で定義された楕円曲線に関する不変量も計算できるようになった.また,このソフトウェアでは虚数乗法論にあらわれるHilbert class polynomialなども計算できる.このプログラムはインターネット上で公開されており,すでに他の研究機関でも利用されている. このプログラムに関する研究発表を1999年10月に東京都立大学で行われた「第三回代数学と計算」研究集会でおこなった.この発表に関する報告集は電子出版され,東京都立大学のサーバーより入手可能である. また当研究費によって購入した計算機によって,このような計算が高速に行える環境を構築した. 上記のプログラムを使って,有理数体上定義された楕円曲線の虚二次体上の整数点を決定する方法を確立し,その応用として,ある虚二次体上にはあらゆる素点でgood reductionをもつ楕円曲線が存在しないことをしめした.この結果は,1997年7月にイタリアのローマで行われたJournees Arithmetiquesで口頭発表した.その内容はJournal de theorie des nombres de Bordeauxにおいて出版される予定である.この会議に出席する際の旅費として本研究費を使用した.
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