研究概要 |
[1]強近似の不成立例と、Eichler型強近似定理の定式化 代数的数体上の多元環について知られているEichler型強近似定理を、一般の体について考察することが目標である。 PlatonovはSL_1(D)が弱近似性をもたぬような体Kを作っている。筆者の研究により、この反例がEichler型強近似定理の反例にもなっていることが確かめられ、このままでは一般化できないことが分かった。 一方明らかに交換子群[D^x,D^x]はつねに弱近似性をみたすので、これについて強近似性の成否を問うことは意味が残っている。そこで一般の係数体の場合は、強近似定理はSL_1(D)に対してではなく[D^x,D^x]について問題にすべきであると、筆者は問題を定式化しなおした後、その研究を続けている。[D^x,D^x]に対して強近似定理の成立例しか知られていないが、これが成立しない例があれば見つけること、それが見つかったとき、よりゆるい条件(a′)や(a″)なら成り立つかを問題として追求している。 [2]円分数の素因数分解 著書「円分数の素因数分解(その4)」において円分数の素因数分解の計算結果をまとめ、あわせて論説をつけた。その結果は「奇数の完全数はない」との有名な予想の検証(10^<300>以下)に役立つ。単なるルーチン化された計算ではなくケースに応じていろいろ工夫が必要であり、可成りの習熟を要する。
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