本年度の研究における最も主要な成果は、非アルキメデス的幾何学における一意化可能曲線の中でも最も重要な例である、所謂マンフォード曲線に関してその軌道体一意化の理論を構築し自己同型群等の構造のより良い理解が得られたという事である。この成果は具体的には、 1.古典的なシュワルツ三角群の標数零の非アルキメデス解析における類似の定義とその分類、 2.標数正のマンフォード曲線の自己同型群の把握、並びにその位数の評価、 として結実した。マンフォード曲線は、その安定モデルが最も退化した場合の曲線として位置付けられ、その際退化として生じる曲線の正規交差多様体のグラフ化の構造の細かい解析によって上記の成果となった。特に上記の1は、この様な退化と密接に関連した曲線の構造と、所謂超幾何微分方程式のp-進的な構造との間の関連性を示唆しており、非常に興味深いと考えている。高次元においては 3.所謂、擬射影平面が持つ数論的性質の把握、 について、具体的には、知られている擬射影平面がすべて志村多様体である事の証明を行った。ここでの手法は、非アルキメデス的幾何学における周期写像の理論やモジュライ理論等の応用である。しかしながら、1及び2における研究の手法も、今後高次元にも一般化されるべきものであり、これによって実際、擬射影平面の様な、純粋に代数曲面としても、あるいは代数多様体の退化という側面からも非常に興味深い曲面のより良い構造把握につながると考えられる。
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