研究概要 |
今年度は、多様体上で成り立つ解析的不等式と、その定数に表れる、多様体の幾何との間の関係について主に研究した。具体的には、以下のような研究成果を得た。体積の局所doubling条件と局所的弱ノイマン-ポワンカレ不等式の成立、及び、ウェイト関数の境界挙動の条件下で、ウェイト付き測度に関する大域的なノイマン-ナッシュの不等式を条件内の定数のみを使って示した。これは特に、ノイマン境界条件付きの熱核の長時間的上限を示したことと同値である。従って、この結果は、特に、大域的なノイマン-ポワンカレ不等式の成立を意味し、オーデン、スン、ワンの結果を一般化している。また、大域的なノイマン-ナッシュの不等式は境界まで込めた距離球の体積の下からの評価を意味し、そのこととサロフーコステの定理を使うと、局所的なノイマン-ナッシュ不等式の族の成立と、熱方程式の正値解の局所一様ハルナック不等式の成立とは同値であることが分かった。また、この結果の応用として、リッチ曲率が下から定数で抑えられ、境界の(外向き単位垂直ベクトル場に関する)第二基本形式が上から定数で押さえられた、なだらかな境界を持った連結、コンパクトなリーマン多様体に対して、そのディリクレ境界条件付きのラプラシアンの最初の2つの固有値のギャップの下限をその多様体の幾何で表現することが出来ることが分かった。また、これらの成果を次のタイトルのプレプリントとしてまとめた。Nash inequalities for compact manifolds with boundary,preprint.
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