研究概要 |
研究目的でも述べたが,Vassiliev不変量はある意味で結び目不変量を階層分けしたものであり,quantum group不変量すべての情報を含んでしまう.そこで本研究の目的の1つは,有限型不変量即ちorderがある自然数nのVassiliev不変量が如何なる情報を持ち得ないのか明らかにすることであった結び目解消数がその情報であることは既に示していた.任意に与えられた結び目と有限型不変量が等しい結び目解消数1の結び目が存在するという定理によって示したのであるが,この定理にweb diagramの代数的構造から別証明を与えた.ある意味で結び目の構成段階での無駄を省き,order nのVassiliev不変量を表す結び目を鮮明にしたのである.そのアイデアを拡張し,任意に与えられた結び目Kと自然数nに対し,order n以下のVassiliev不変量が同じ結び目で結び目解消数1,かつデルタ型の結び目解消数がKのorder 2のVassiliev不変量,またクラスプパス変形における結び目間の距離はKのorder 3のVassiliev不変量の情報で決まるものの構成に成功した.このことにより,有限型不変量のうちデルタ型の結び目解消数の情報を待っているものは,order2のVassiliev不変量のみであり,クラスプパス変形の距離の情報はorder3のVassiliev不変量しか持ち得ないことがわかったのである. 一方,web diagramによる別証明ではC_n-moveという結び目の局所変形を用いているのであるが,order nのVassiliev不変量に影響を与えるものと与えないものの双方の存在が確認でき,その分類がorder nのVassiliev不変量を代表する結び目をより鮮明にすることが期待され,今現在考察中である.
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