研究概要 |
射影的複素代数多様体に対して,その普遍被覆空間の幾何及び複素解析的性質と,もとの代数多様体自身のもつ幾何的,解析的性質の比較や関連付けに関する研究を行った.Kollar氏により射影的複素代数多様体はその基本群により,次のようなある種のファイバー構造をもつことが知られている(1995).「ある射影的複素代数多様体Sとそこへの全射有理写像f:X→Sの組で,その一般ファイバーFの基本群は有限で,かつf:X→Sはそのような写像のなかでSの次元が最大である.」これは所謂シャファレビッチ写像(のある種の一般化)である.つまりXからその基本群が小さい(有限)部分Fを取り出すことができるのである.そしてKollar氏は次のような予想をした.「LをX上のアンプル直線束で,F上の随伴束K_F+L|_Fは非自明な大域切断をもつものとする.このとき,X上の随伴束K_X+Lも非自明な大域切断をもつであろう.」本研究の平成11年度の主要実績は上記の予想の肯定的な解決である.これによる代数多様体の分類理論への幾つかの応用もあり,分類理論における基本群の役割の一つの有用性を示すものである.その証明にはXの普遍被覆空間X^^〜上の随伴束の理論(それを非コンパクトなX^^〜上で論じることは新しい),アティヤのL^2指数定理が用いられる.また特異エルミート計量,乗数イデアル層の概念,ネーデル消滅定理等が重要である.
|