1990年代後半に、Hennings、Kauffman、Radfordの3氏はユニモヂュラーなリボンホップ代数から3次元多様体の不変量を構成する方法を与えている。この研究の目標は、量子群とは別タイプのユニモヂュラーなリボンホップ代数の中で、低次元多様体論の研究に役立つもの(例えば、基本群だけで決まらない不変量)を発見することである。これを達成するために、今年度は、有限群の群ホップ代数から作れるリボンホップ代数の構造を「決定した」が、この中のリボンホップ代数からは目新しい不変量を見い出すことはできなかった。 有限群が巡回群の場合には、村上斉、大槻知忠、岡田真枝の3氏によって、既に、リボンホップ代数の構造が決定され、そっれを用いて定義される不変量の性質もある程度調べられている。また、昨年度までの研究成果として、二面体群、一般四元数の群ホップ代数のリボンホップ代数の構造が決定されている。そこで、上記以外の有限群の群ホップ代数についてそのリボンホップ代数の構造を調べた。その結果、「任意の非可換有限群の普遍R行列は、ある極大な可換正規部分群の普遍R行列になる」ことがわかった。これにより、群を非可換にしても、得られる3次元多様体の不変量は、本質的には可換の場合と変わりがないことが明らかになった。 標数0の代数閉体上で定義された11次元以下のホップ代数の分類は増岡彰氏やStefan氏らによって完成されているので、今後はこれらの中に、3次元多様体の意義深い不変量を与えるリボンホップ代数が存在するかどうかについて、検討していきたい。
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