研究代表者は、本年度の研究に於いて、ゲージ理論の4次元トポロジーへの応用に関する考察を行った。その中で、古田氏によって定義されたホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量が、従来のサイバーグ・ウィッテン不変量では到達できない結果を引き出していることに注目し、そのような結果をどこまで出すことが可能なのか、調べ上げてみることを試みた。現時点では、以下のことが研究の途中段階にあり、その一部が学会等に於いて口頭発表されたが、結果としてはまとめていない。また、それらは古田幹雄氏(京大数理研)、南範彦氏(名古屋工大)との共同研究である。 1.コホモトピー論に関するある定理と不変量の連結和に関する結果を組み合わせることにより、ホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量が4次元多様体のある数以上の連結和によって消滅することがわかる。特に代数曲面の場合には、連結和の個数がある数まで消滅せず、それを超えると消滅することが観測される。 2.ホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量を幾何的に解釈し、張り合わせなどの従来の解析的手法のある点での精密化を行うことにより、この不変量が消滅しない4次元多様体に埋め込まれた曲面に対して、その種数をホモロジー類で評価する随伴不等式が成立する。その一つの応用として、与えられたホモロジー類に対して、代表曲面の連結和に埋め込まれた曲面で最小の種数を持つものが、それぞれの代数曲面の中の代数曲線の連結和によって実現されることがわかる。
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