研究概要 |
ここ数年,スピン表現公式と呼ばれるユークリッド空間の曲面の表現公式とその応用が盛んに研究されているが,本研究においては,3次元双曲型空間の平均曲率一定な曲面にたいする表現公式を得た.これもスピン表現公式と呼べるものである.また,その表現公式に用いるデータの満たすべき微分方程式が,無限次元の可積分系であることを示した.その中でも特に平均曲率一定な回転面および螺旋面を記述する方程式は,それぞれ,有限次元の完全積分可能系であることを示した.その応用として,計算機を使い,平均曲率一定な回転面および螺旋面のグラフィクスを与えた. また,高次元のユークリッド空間の完備極小曲面に関する研究も行った.極小曲面とは平均曲率が恒等的にゼロの曲面のことである.スピン表現公式を一般化した公式を応用することにより,いくつかの新しい例を構成した.これらは高次元(5次元,7次元)のユークリッド空間に現れるもので,良く知られたエネッパーの曲面,カテノイドやトリノイドの一般化であると言える.また,それらの全曲率に関する研究も行った.全曲率に関するいくつかの不等式が知られているが,それらの等号条件を調べることによりカテノイドを特徴づける結果を得ることができた. 今後の研究課題であるが,3次元双曲型空間の一般化と解釈できる,非コンパクト型対称空間における曲面の理論に可積分系理論的アプローチの可能性を探りたい.この場合にも,曲面のフレネ方程式にあたるものにたいしそのようなアプローチが可能であることが期待される.
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