研究概要 |
以下では,2次元複素解析空間の正規特異点を単に2次元特異点とよぶことにする.特異点を分類,解析するためにさまざまな不変量が導入されているが,本研究では特に多重種数δmに注目している.2次元特異点の場合,δm=am^2+0(m)となる.ここでαは-P・Pと書かれる特異点の位相不変量であり,有理数である.特異点の変形において,各自然数mに対しδmが上半連続になることが石井志保子氏によって証明されている.そのことから-P・Pも上半連続になることがわかる.本研究では-P・Pを一定に保つ変形について考察した. まず,RDP良解消という新しいタイプの特異点の部分解消を導入した.それは,有理2重点のみをもち,対数的標準モデルおよび標準モデルよりも少し「きれいな」部分解消であるといえる.そして,どのような層でブローイング・アップすればRDP良解消が得られるのかを調べた.上記の石井氏の議論と,δmの公式,および同時対数的標準モデル存在性の議論から,-P・Pを一定に保つ2次元ゴレンスタイン特異点の変形において,同時RDP良解消が存在することが分かった.有理2重点のみをもつ曲面の変形は,適当な基底変換をとると同時特異点解消できるというBrieskornの結果を用いて,次の定理を得る. 主結果 2次元ゴレンスタイン特異点の小変形において各ファイバーの-P・Pが不変であれば,適当な基底変換をとった後,変形の同時特異点解消で各ファイバーが最小良解消になるものが存在する.ここで,良特異点解消とは例外集合が正規交叉因子になるような特異点解消を意味している. J.Wahl氏が,2次元特異点の小変形において△が不変であれば同時対数的標準モデルを持つであろうと予想しているが,上の結果はそれより強い結果である.
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