研究概要 |
本研究では,集合値写像の凸性と半連続性に関する性質を継続して解析すると同時に,この基礎研究をもとにして,集合値鞍点定理や集合値ミニマックス定理の研究とその多目的ゲーム理論への応用を試みた。得られた結果は以下の通りである。 1.多目的ゲームの簡単な場合として,2目的2人零和行列ゲームの利得関数の像の形状の分類を数学的に正確に行った。これには,計算機上のC言語プログラムを利用して,これまでに得られていた結果を再現し,分類の基準となるパラメータを導き出した。これまで曖昧な特徴付けであった「不動点型」をさらに「バタフライ型」,「台形型」,「三角形型」に細分した。この結果の前半の部分については,台湾で開催された国際会議ICMAA2000において2000年1月に招待講演による発表を行い,後半の部分と3目的の場合を現在,論文にまとめている。これらの内容は,2000年6月に韓国で開催される国際会議INFORMS-KORMSで発表の予定である。 2.ベクトル値関数の鞍点定理やミニマックス定理の体系的な結果をさらに洗練し,集合値鞍点定理や集合値ミニマックス定理の基礎となるKy Fanの不等式のベクトル値関数版と集合値関数版を得ることができた。現在,この結果を論文にまとめており,この内容とその応用を2000年7月にイタリアで開催される非線形解析学者国際連合会WCNA2000で発表する予定である。 3.多目的ゲームのもう一つの試みとして,展開型協力ゲームの協力度合いの拡張概念について考察を行った。その結果として,「部分協力」という概念を導入することができ,論文にまとめることができた。
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