研究概要 |
ランダム行列理論から自然に導かれるランダム場とその類似についての研究と,平行して無限グラフ上の磁場付きシュレーディンガー作用素とラプラシアンのスペクトルについての研究を主に行なった. ランダム行列理論については,ランダム行列の典型例であるガウス型ユニタリアンサンブルから自然に導かれるランダム場(無限粒子系)についての性質を調べた.これは物理的にはフェルミオンを表現するものであるが,これと対極の概念にあるボゾンについても同様の研究の端緒についた.フェルミオンとボゾンをラプラス変換によって特徴付けて,その表示から相関関数がそれぞれ,配置空間上の2乗可積分関数の空間に作用する積分作用素の積分核の行列式とパーマネントで表現できることを示した.さらに丁度この二つの概念の中間に,独立な場であるポアソンランダム場が位置することを示し,同じ枠組のなかでこれらのランダム場が扱えることを示した. グラフのスペクトルについては,アーベル群が作用するような周期的な格子を考え,その無限グラフ上の磁場付き離散的シュレーディンガー作用素のスペクトルおよび,ラプラシアンのスペクトルについて研究した.特にスペクトルの下端のヘッシアンは,アーベル群の作用によって格子を同一視して得られる有限グラフとそのアーベル群のユニタリ表現によって表現可能であることを示した.また,アーベル群が作用する無限グラフのスペクトルの性質(特にブロッホ性)を,幾何的な側面に着目して調べた.さらに極大アーベル被覆グラフ上のスペクトルに関する予想の部分的解決を,グラフ理論の1因子という概念と結びつけて与えた.
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