研究概要 |
今年度は確率過程のwavelet解析に関する基礎付けということについて、確率過程の極限分布の解析の観点から研究を行った。1つは確率過程のt→∞の極限分布の特徴付けに関する定式化であり、1つは確率過程の列のD[0,∞)上の(無限次元)分布の収束に関する定式化である。これらの議論は、translationκについては算術平均的のL^p-ノルムとなるような関数および数列Besovノルム(stochatic Besov空間のノルム)を定義してそのノルムに関する収束を考えることによってなされる。そこでは、過程の関数Besovノルムとwavelet係数の数列Besovノルムに対し同値性が満たされており、過程の性質がわかっている時にwavelet係数の数列Besov空間での特徴付けを過程の関数Besov空間での特徴付けから与えることは順問題の形となり、逆に、過程の性質が未知の時にその関数Besov空間での特徴付けをwavelet係数の数列Besov空間での特徴付けから与えるという逆問題の形になる。ここで基本的に重要な問題は、Besov空間での特徴付けが実際の過程の特徴付けをどこまで与えるか、そのギャップを明らかにすることである。 極限分布の問題に関して前者については、R^d値確率過程X_tの分布の不変測度μへの収束t^<-1>∫^t_0f(X_t)dt→∫_<Rd>f(x)dμ(x)as t→∞ただしfはR^d上の有界連続関数、をf(X_t)のstochatic Besovノルムをとり、そのノルムの確率L^pノルムをとることによって特徴付けるものである。stochatic Besov空間で収束することはもとの収束のための十分条件であるが、必要条件ではなく、今後この差を特徴付けたい。 後者については、X^n_t,n=1,2,…のD[0,∞)上の法則収束をX^n_tの対応するwavelet係数列の数列stochastic Besov空間でのノルムの収束により特徴付けるものである。こちらの問題に関してはまだ十分な結果が得られておらず、数列stochastic Besov空間で収束することはもとの収束のためのほぼ十分条件になるという予想のもと、必要また十分条件をさらに詳しく調べたい。
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