研究概要 |
本研究課題のBartholomew予想とは,順序制約下での尤度比検定であるX^^-^2検定の検出力の単調性に関する問題であり,「検出力は対立仮説錐Cの中心方向で大きく,端に近付くにつれ小さくなる」という現象を象徴する未解決問題である.研究代表者は近年Eaton-Perlmanによるmajorizationの理論の一般化を試み,この予想に対する有効な接近法を見い出し,部分的ではあるものの完全な解決を与えることに成功した.本課題ではこれらの成果の深化・発展を目指して研究を進めており,研究初年度における実績は概ね次の2点である.まず第1点はこれまでに開発された方法論の整備を目的に,導入された順序関係の構造に関する理論的な精査を進めた.現時点における成果としては,鏡映群によるmajorizationの順序とBruhat順序の間の同値関係に関する新たな知見を与えることができ,その成果をまとめた論文を執筆中である.第2点は,不等式を保存するような対称性の変形の問題に関するものである.これまでの結果は「対立仮説錐Cの鏡映対称性」と「単峰性」を結び付けたことにある.本研究課題では「鏡映対称性以外の対称性(例えば原点対称性や軸対称性)の場合に同様の結果が得られるか」という問題を考察しており,Anderson-Mudholkar型不等式の変形を目指している.初年度には等周問題におけるSteiner symmetrizationのアイデアの適用を試み,ある種の確率不等式を保存するような対称性の変形に関する興味深い結果を得ることができた.これに関連する結果をまとめた論文(神戸商科大・森谷義哉氏と共著)を海外の国際的な雑誌に投稿中である.
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