時間変化する自由境界の運動を求める移動境界問題に対する実用性・汎用性・信頼性をバランスよく兼ね備えた数値解法の開発を行った。具体的には、自由境界からの符号付距離関数の有限要素近似・差分近似を利用したレベルセット法をもとに、次のような改良・数値シミュレーションによる解析・理論解析を行った。 1.離散版最大値原理に基づくレベルセット法の解析を行い、自由境界の運動をレベルセット法により数値的に捉えるためのメッシュサイズと時間ステップの満たすべき必要条件を導いた。また、その必要条件のもとで、提案している離散化方程式を実現する効率的なアルゴリズムを提案し、そのアルゴリズムがもとの離散化方程式と同等であることを証明した。(信頼性・実用性) 2.離散化方程式及びアルゴリズムが次元に依存しない多次元拡張性を持つことに加え、様々な移動境界問題に対し具体的な数値計算を行い、今回のレベルセット法がある程度の汎用性を持つことを確かめた。具体的には平均曲率流問題・2相ステファン問題・1相外部へレショウ問題などについて、数値計算アルゴリズムを提案し、数値シミュレーションを行った。(汎用性・実用性) これらの研究成果により、符合付距離関数を用いたレベルセット法が実用性・汎用性・信頼性をバランスよく兼ね備えた移動境界問題の有望な数値解法であることがわかった。また、今後の安定性・収束性などの数学的基礎付けに展望が開かれ、更に高い汎用性を持たせる方向へもつながるものと考えている。
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