研究概要 |
本研究代表者は,固有ベクトル展開を許す作用素によって記述される放物型分布定数系(放物型偏微分方程式系)に対して,剰余モードフィルタを含む構造をもつ有限次元H_∞コントローラの構成法を既に与えている.ただし,この有限次元H_∞コントローラを取り付けることによって得られる閉ループ系に対して,外乱と制御量との関係を考察するための具体的な数値実験までは行っていない.本研究代表者が扱ったこのシステムは非常に基本的ではあるが,放物型分布定数系の中では狭いクラスを構成しているにすぎず,一般性に欠けている.例えば,化学反応の制御や柔軟構造物の制御などの応用まで視野に入れると,より広いクラスに拡張して議論する必要がある.本研究の目的は,固有ベクトル展開を許す作用素によって記述される放物型分布定数系において,アクチュエータまたはセンサが領域の境界上に配置されている場合,すなわち入力作用素または出力作用素が非有界作用素になる場合のコントローラの具体的な形を求め,そのコントローラを用いたときに,システムに加わる外乱が制御量に及ぼす影響を調べる数値実験を行い,さらに非線形摂動が加わる場合や固有ベクトル展開を許さない作用素によってシステムが記述される場合に対して,既に得られている結果を拡張することである.平成11年度は,前者の数値実験を主にとりあげ,計算機を用いて有限次元H_∞コントローラの形を具体的に求めた.
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