今年度は、一般の空間に値を取るcovariateを持つような非線型covariate点過程モデルへの応用を考察した。この研究には2つの意味がある。第一に、昨年度までに得られていたmultiplicative intensityモデルにおける結果を自然に一般化するための第一歩としての意義である。結果として、covariate空間を適切に分割し、それに対応したbandwidthをもつスムージングを行えば、multiplicative intensityモデルにおける結論が非線型モデルの場合にもそのまま成り立つことがわかった。第二の意味は、この非線型モデルはLexisダイアグラムと呼ばれる有用な点過程モデルに帰着できるということである。Lexisダイアグラムは、時代と年齢の効果を分析するコーホート解析において基本とされる手法であり、エントリー時刻が一定でない生存解析を行うために有用である。この特別な場合においては、驚くべきことに、漸近論に関する何らの仮定をおくことなくノンパラメトリック最尤推定量の収束率を導出できるということがわかった。来年度への課題として、このLexisダイアグラムの上におけるCox回帰モデルの研究を行いたいと考えている。部分尤度に関する最尤推定量の漸近的性質を導くために、研究中であるエントロピー法の一般論が有用となることが予想される。
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