本研究の目的は、熱方程式の解を保つ変換について研究すること、特に具体的な形を求めること意識して調べることである。今年度に得られた新たな知見として次のものがある。 (1)次元が異なるユークリッド空間上の熱方程式を保つ変換については、 まず最初に、Appell変換の直接の拡張として、写像が時間座標毎には多項式写像にであり、かつ時間座標の変換が実解析的である場合にではあるが、熱方程式の解を保つ変換の形を具体的に、完全に決定した。さらに、それらの変換はすべてAppell変換の直和で得られることが示された。これは一般の場合の研究の指針になると期待される。 (2)ユークリッド空間上のpolytemperatureを保つ変換については、その特徴付けを熱方程式の解を保つ変換の場合を含む形で得た。さらに、次数が2以上の時には、熱方程式の解を保つ変換の内で時間座標の変換が一次分数関数であるようなものと、対応していることが解った。この対応は、写像はそのままで、荷重関数には時間座標の変換の分母を次数-1乗をかけるというものである。 (3)リーマン多様体上の熱方程式を保つ変換については、ユークリッド空間上の熱方程式を保つ変換の特徴付けを拡張する形で、特徴付けを得た。具体的な場合として、ユークリッド空間に回転不変なリーマン計量を入れた多様体上の熱方程式を保つ変換を調べ、Appell変換の直接の拡張の場合には、ほぼ形を決定することが出来た。その中に、ユークリッド空間では存在しない興味深い例を得た。
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