研究概要 |
集積期の火星熱史をシミュレートする数値コードの開発および,種々パラメータ下での数値実験を行った.数値コードは,個々の微惑星衝突による熱的擾乱を計算するパートと,衝突間の熱的進化を計算するパートからなる.熱的擾乱計算のパートでは 1)微惑星衝突による衝撃加熱と,2)クレーター掘削による鉛直熱移流を衝突速度と微惑星サイズ・組成の関数として評価する.まず具体的なクレーターの形状を考慮して計算し,その結果を水平方向に平均化することにより鉛直一次元問題に帰着させる.この一次元化は計算資源の節約のためだが,多数の微惑星衝突が起こる場合には有効な近似である.衝突間の熱的進化は,熱拡散・対流と内部発熱を考慮し,鉛直1次元熱輸送方程式を解くことにより求める.これらの計算のサブパートとして,珪酸塩と金属の分離過程(分化過程)も同時に計算される.衝突時に衝突点が融解温度に達する場合,微惑星に含まれる金属鉄が瞬時にマグマの池の底に沈積し,金属塊を作ると仮定する.各金属塊は惑星内部をストークス則にしたがって沈降するものとし,金属塊同士の衝突合体も考慮する.沈降によって解放される重力エネルギーは,内部発熱項に組み込まれる. 数値実験は,さまざまな微惑星の質量分布や集積時間を仮定して行った.ただし原始大気による保温効果はまだ考慮していない.主要な結果は以下のようにまとめられる. 1) 火星中心部はあまり加熱を受けず集積中には分化しない. 2) 分化は内部の温度プロファイルがシリケイトの融点を超えていなくても起こり得る.これは衝突点周辺のみが融解することがあり得るからである。 3) 未分化領域のサイズは平均微惑星質量が小さいほど大きくなる.平均微惑星質量が10^<16>kg以下の場合には全領域で分化が起こらない.
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