大質量星は巨星段階において、その表面から自らを構成するガスを周囲の空間へ放出する(星風)が、このガスは星周物質として最終的に星を取り巻くように分布する。星は超新星爆発によって光の1/10もの速度で周囲に広がり始め、すぐに星周物質に衝突する。この衝突によって発生した衝撃波は超新星物質と星周物質の双方を加熱して、電波やX線などの電磁波を強く放射する。 今年度は、現在までに観測されている超新星SN1987Aの電波・X線の光度・強度の時間変化を正しく説明できる超新星物質と星周物質のモデル構築を行なった。超新星物質については、超新星爆発の理論モデルから得られている現実的なモデルを採用し、星周物質については密度分布を仮定して、衝突の数値流体シミュレーションを実行して、観測と比較することにより密度分布を求めた。現在のところ、少なくとも星周物質の密度については、従来考えられていたよりも、10倍以上希薄でなければならないことが分かっており、このような値になるためには、星風の状態が特殊であったことを示唆している。 本研究で注目している超新星SN1987Aの周囲にはリング状の星周物質が存在しており、西暦2000年頃に超新星物質との衝突によって非常に強いX線が放出されると予想されているが、このリング状物質の一部が明るく輝き始めたことがハッブル宇宙望遠鏡の観測によって確認された。 引続き計算を続けて、リング状物質を含めた詳細な分布を明らかにする。
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