研究概要 |
X線天文衛星「ぎんが」は1987年3月から1991年11月までの間に1000個を超える天体を観測している。「ぎんが」の観測データは人類の貴重な財産であり,X線天体の長期変動の研究、新事実が発見され重要となった天体の再解析等、利用価値は非常に高い。しかし、近年の計算機のダウンサイジングにより、観測データの解析プラットホームであった大型計算機が利用しにくくなり、簡単にデータ解析を行うことができない状況になっている。この状況を打開するために、大型計算機で開発されたソフトウエア資産を有効に活用しながら、移植性の良いデータ解析システムをUNIXワークステーション上で開発している。本年度の研究でX線スペクトルの解析システムについては開発がほぼ完了した。 開発したシステムを用いて、6つの銀河団(Abel496、Abel644、Abel1367、Abel795、Abel2142、Abel2556)のデータ解析を行った。エネルギー領域1-20KeVのX線スペクトルは光学的に薄いプラズマからの熱輻射モデルでよく表され、Mewe-Kaastraモデルによるフィッティングで、銀河団の温度、重元素量、Emission Integralを求めた。以前の観測から、これらの量の間には相関があることが知られているが、6つのサンプルを用い相関係数を求めたところ、温度とEmission Integralは0.88、温度と重元素量はー0.56、Emission Integralと重元素量はー0.45と求められた。また、Emission Integralが温度の2.7乗に比例していることがわかった。
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