高感度な遠赤外線検出器である外因性半導体Ge:Ga素子は、衛星環境のような極低温の低背景放射環境では、複雑な過渡応答特性を示すことが知られている。 この応答特性を正確に調べるため、背景放射とシグナルに相当する2つの光源と、シャッターを用いた測定システムを構築し、ステップ入力に対するGe:Ga素子の応答を測定した。背景放射強度で10^5〜10^9photons/sec、シグナル強度で10^6〜10^9photons/secという、非常に広いフォトン数領域において測定を行い、2つないしは3つの時定数を導入することにより、過渡応答特性のモデル化を行った。典型的には、10^7photons/secのフォトン数環境において、1.5sec、30sec程度の2つの時定数成分を持つ。とくに、10^8photons/sec以上のフォトン数環境では、さらに長い時定数を持つovershoot成分が見られた。また、これらの時定数は、入射フォトン数環境に大きく依存することが分かった。 上記の測定結果を用いて、次期赤外線天文衛星Astro-Fのサーベイ観測データに対する、過渡応答特性の影響をシミュレートした。その結果、観測データには、入射フォトン数環境だけでなく、観測する光源の広がりにも依存する影響が現れることが分かった。
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