研究概要 |
ターゲットの8つの銀河最外縁の分子雲のうち、銀河中心からもっとも遠方に位置する考えられている「Cloud2」のハワイ大学60cm望遠鏡による近赤外広視野サーベイデータを解析し、7個の赤い近赤外線源を検出した。UKIRT3.8m望遠鏡を用いた1.8-2.4μmの分光観測の結果とあわせ、これら近赤外源がCloud2に付随する若い天体であることを示した。近赤外線源の分布を電波による分子雲の広がり/IRAS衛星による遠赤外線のマップ等と比較した結果、銀河系の光学ディスクの端に位置するCloud2において星生成活動性が存在することを示唆し、以上の結果を学術論文として公表した(Kobayashi and Tokunaga 2000, Astrophysical Journal, in press)。 また、本科研費を用い高機能PCと独自ソフトを組み合わせた高速データ解析システムを構築し、ハワイ大学2.2m望遠鏡によるCloud2のより高感度/高分解能の近赤外サーベイデータを解析した。その結果、Cloud2に付随する多数の暗い近赤外線源を検出した。近赤外の色超過から、これらが若い天体であることを結論し、Cloud2での活動的星生成の存在を確定した(Kobayashi and Tokunaga 2000, in preparation)。Cloud2は、矮小銀河(dwarf galaxies)に典型的に存在する、重元素量の低い低密度ガス環境下での星生成のよい実験場となる。このような環境下での質量関数(IMF)を上記データより現在求めつつある。 ハワイ大学60cm望遠鏡による残りの分子雲のサーベイデータを現在解析中であるが、次年度はそのまとめをもとに、銀河系最外縁でのグローバルな星生成を考察する予定である。また、検出した近赤外線源を、国立天文台「すばる」8m望遠鏡の近赤外分光器IRCSを用いてフォローアップする予定である。
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