一般相対性論におけるLense-Thirring効果で知られているように、回転のある場合、慣性系の引きずりが起こります。これまでの重力レンズ研究の多くは、レンズ天体の回転を無視していました。回転による光の伝播に対する影響は、通常の天文現象では非常に小さいためです。しかし、高精度な天文観測装置が次々と登場している現在、回転による効果を詳しく調べることは非常に有意義です。まず、回転しているレンズ天体での光の従う運動方程式を、一般的に導きました。そして、いわゆる「重力レンズ方程式」を重力定数の1次(つまり、計量摂動の1次)で求めました。もちろん、回転による影響が現れています。しかし、実際の天体観測のように、レンズ天体の質量分布が予め分かっていない場合、回転による効果だけを観測結果から分離出来ないことがわかりました。実は、この点について、これまで専門家の間にも誤解がありました。今回の成果は、それを明白にした事で、重力レンズ研究において重要です。 宇宙の非一様性を記述する、「相対論的宇宙論におけるラグランジュ摂動法」を圧力のある流体の場合にも使えるように拡張しました。具体的には、密度の連続の式の代わりに、エントロピーを導入し、その連続の式がラグランジュ座標では厳密に積分出来ることを用いました。今後、この方法の宇宙論への応用を行いたい。
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