本年度は、光子標識化用位置検出器系の試作およびその性能評価を行なった。試作品には、企業から購入した、幅74mm、ストリップ幅0.5mmのシリコンストリップデテクタ(SSD)を用いた。このSSDは、耐放射線損傷性を高めた特別のものであり、実験期間中に予想される放射線量にも充分耐えうるよう設計されている。また、小型化した増幅、整形、デジタル化回路には、カリフォルニア大学サンタクルス校においてZEUS実験のために開発された、TEKZと呼ばれるデバイスを用いた。以上のデバイスを用いることにより本研究の目的達成のために必要とされる、1MeV程度のエネルギー分解能での光子標識化と、数十MHzの計数率に耐えられる検出器-読みだし系を実現した。 試作した検出器系は、東北大学原子核理学研究施設および米国ジェファーソン研究所において性能評価試験を行なった。研究の目的達成のために必要な、チャンネルあたりの計数率数百kHzまで、検出効率および時間分解能に関して設計通りの動作をしていることを確認し、放射線損傷についても、実験期間中に予想されている線量の数倍の線量を与えても、性能の劣化が見られないことを確認した。
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