研究概要 |
ブラックホールを含む自己重力系における熱平衡状態にはこれまでも多くの未解決の問題が指摘されてきた。長距離相互作用のために正確には系を2つの独立な部分系に分解することができないことがその一つの特徴として挙げられる。また現実の天体ではまだ十分に緩和過程が進んでいないと考えられているが、それとは独立に特定の分布量に関しては十分な緩和過程が起きている示唆もある。このような系に対しては通常のボルツマンーギブスの統計力学を適用することはできない。このような状況の中で最近Tsallisエントロピーというq変形されたエントロピーに基づいた新しい統計力学が非平衡過程のある種の部分の記述に有用かもしれないという示唆が与えられ、注目をあびるようになった。私はその新しく導入されたエントロピーの一意性に関してどの程度の説得力があるのかを考察し、熱釣り合いの関係式を導出するのに不可欠なcomposablityという概念と情報理論におけるエントロピーの一般形を連立させるとTsallisエントロピーが自動的に要請されることを示した。(Composability and Generalized Entropy, Physics Letter A262,(1999)302-309)更にq指数の異なる部分系の合成エントロピーを一般的に導いてその単調増加性を議論した論文も現在投稿中である。
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