高時間分解能を達成するにあたって、シンチレーション光よりも閃光性の高い(ナノ秒以下)チェレンコフ光の利用を試みた。チェレンコフ光の光量は通過粒子の電荷の二乗に比例するため、陽子ビーム(電荷1)への適用には光量の減衰と喪失を最小限にする必要があった。光学系の最適化(チェレンコフ光発光媒体長、集光用鏡面の曲率、光電子増倍管の設置位置)を計算機シミュレーションにより行い、今回の予算を用いて第一回目の検出器作成を行った。平成11年12月に高エネルギー物理学研究機構T1ビームラインに於いて、2GeV/cのπ中間子を用いて性能評価を行った。解析の結果、時間分解能は40ps程度と高分解能であるが、設計値を下回った。この原因として、(1)この測定器がビーム軸対象な形状を持つため、ビームと測定器のミリメートルオーダーの軸のずれが集光の可不可を決めること(オンライン解析の時点で確認)、(2)反射鏡面の精度の不足(レーザーを用いたベンチテストで確認)が挙げられ、10psへの改良に向けて、設計および製作の精度向上のための基礎データが得られた。光電子増倍管を用いた場合の時間分解能は基本的には光電子数の統計に因るが、(3)10psオーダーの高時間分解能を得るには数百個の高光電子統計の場合でも光電子増倍管の光学特性に対する依存性が無視できない、事が確認され(レーザーを用いたベンチテスト)増倍管の選定に対しても改良の可能性があることが理解された。
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