高時間分解能を達成するにあたって、シンチレーション光よりも閃光性の高い(ナノ秒以下)チェレンコフ光の利用を試みた。時間特性はチェレンコフ光光子数の統計による為、光量の減衰と喪失を最小限にする必要があった。 昨年11年度に於いては、光学系の最適化(チェレンコフ光発光媒体長、集光用鏡面の曲率、光電子増倍管の設置位置)を行い、第一回目の検出器作成を行った。同検出器を平成11年12月に高エネルギー物理学研究機構T1ビームラインに於いて、2GeV/cのπ中間子を用い性能評価を行った。結果は時間分解能は40ps程度と高分解能であるが、設計値を下回った。この原因として、ビームと測定器のミリメートルオーダーの軸のずれが集光の可不可を決めることが理解された。 これを受け本年12年度には、チェレンコフ光発光媒体と集光用鏡面の一体化により、光学系の精度向上をはかった。本年度予算を用い、第二号機の検出器製作を行い、平成12年12月下旬に、上記T1ビームラインで2GeV/cのπ中間子を用い、再度性能評価を行った。今回はPersonal Computer上で汎用性の高いLinuxベースの、オンライン解析-体型のデータ収集系を用いた。これにより、昨年度問題になった、ビーム軸と検出器の軸のずれを測定初期において較正し測定に臨むことが出来た。この結果、時間分解能16.8p±1.2(stat.)±1.8(sys.)という、目標の10ps台を達成することが出来た。更なる時間分解能向上には、(1)光学媒体の短波長領域での光透過性、(2)光電子増倍管の増幅時間分布幅(TTS)の二者に、さらに性能の良いものを用いることが次の一手である事も視野に入った。 上記平成13年に得られた実験解析結果は、Nuclear Instruments and Method等の論文に発表するため、モンテカルロ計算との比較を現在行っている。
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