kmスケールの重力波レーザー干渉計では、潮汐力による地殻変位による懸架鏡のドリフトに追随するために、数〜数十[μm/V]程度の効率で10kg程度の懸架鏡に対し能動的に位置や姿勢の制御をしなければならない。また、低温鏡は、冷却導体であるサファイアファイバーの熱伝導効率と懸架ワイヤーとしての性能、サファイア鏡のレーザー光の熱吸収との妥協点から、20Kの温度が設定されている。よって、マイスナー効果により外部磁場により低温鏡を駆動する場合、簡便な元素超伝導薄膜は臨界温度の点で不可能で、かつ、超伝導薄膜の臨界磁場の大きさを考慮すると、第1種超伝導薄膜よりも、第2種超伝導薄膜が有望なことが計算により判明した。しかし、その時得られる鏡の駆動効率は、駆動する超伝導コイルの巻き数や負荷電流、薄膜の厚さを現実的な値の中で最大限にとることにより、かろうじて数[μm/V]に達する値で、かつ、ヒステリシス等を考慮すると、安定性を欠きかねない場合もありえることが判明した。 今後は、実際にミラー基盤背面に第二種超伝導薄膜を形成し、駆動力の検証、薄膜の形成配置の最適化、および温度安定性等の性能評価を行った後、実際にFabry-Perot共振器の制御を行う予定である。
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