(1)弦理論には、基本弦を源とする反対称テンソル場が存在する。このテンソル場が場所に拠らない背景場として入っている空間にDブレインが存在すると、その時空の座標が非可換になることが知られている。Dブレインの物理はその上に端を持つ開弦によって記述されるが、この開弦の力学を記述する理論として開弦の場の理論というものが知られている。私と研究協力者(高橋智彦氏・東大理)は、前年度の研究においてウィッテン型の開弦の場の理論を使って、先の背景場上での開弦の場の理論が二つ構成できることを見つけた。一つは非可換な空間上の理論であり、もう一つは通常の可換な上で背景場が先の理論と異なる形で入っているものである。そして、我々は、実際にこれらの見かけ上異なる理論が場の変数変換によって移り合うことができる同じ物理を記述する理論であることを示した。この研究をさらに精密化するために、浅川-九後-高橋の開閉混合弦の場の理論を用いて、同様の研究を行った。 (2)M理論には、M2ブレインとM5ブレインが存在する。このM5ブレイン上に3階の反対称テンソルを外場として入れるとM5ブレイン上に端を持つM2ブレインの張力をM理論の次元をもつ基本的な定数であるプランクスケールに較べて、小さくできることがわかる。この時には、M理論にある重力などを伝える閉じたM2ブレインは、このM5ブレイン上の開いたM2ブレインとは相互作用できなくなる。私と研究協力者(寺嶋靖治氏・東大理)とは、この理論をトーラスにコンパクト化した場合を系統的に調べ、この理論におけるT-双対性を明らかにした。また、2次元のトーラスにコンパクト化した場合の理論が4次元における非可換開弦理論と非可換超対称ヤン-ミルズ理論とのS-双対性(結合定数の強弱双対性)を与えることを示した。
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