本年度はまず、柴田佐々木による原始ブラックホール形成に関する最新の数値シミュレーション結果に基づき、私が提案したカォティックニューインフレーションモデルにおいて形成する原始ブラックホールの生成量を計算し、総合報告にまとめた。また、元素合成直前に蒸発する、比較的低質量の原始ブラックホールが初期宇宙の元素合成に与える影響を、クォークグルオンジェットの影響まで含めて初めて定量的に解析した。そして、許されるブラックホールの数密度を定量的に求めた。さらに、インフレーション中に生成する密度揺らぎの通常の計算では、インフラトンが静止したときに揺らぎの振幅が発散するように見えるが、正しい計算をした結果、この発散は減衰モードにしか現れず、ブラックホール形成を誘引しないことを見いだした。
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