本研究は、CP非保存現象を研究する上で現在最も興味をもたれている過程の一つである、中性K中間子の稀崩壊モードK_L→π^0ννの測定実験に関するもので、余分な光子を含むバックグラウンド事象を排除するための光子検出器の開発を目的としている。特に、大強度中性ビーム内に設置するものを念頭に置いているので、光子感度を十分高く保ったまま、0.1%程度の低中性子感度に抑える必要である。本年度の研究で作用した方法は、10mm厚のアクリル板と2mm厚の鉛板を交互に連ねたサンドイッチ型カロリメータとするもので、試作器を用いて以下のことを行なった。 1.中性子ビームによる性能評価 大阪大学核物理センター(RCNP)の中性子施設であるNOラインを利用して中性子感度の測定を行なった。Time of Flight(TOF)法によってエネルギーのわかった中性子を試作器に入射し、設定したエネルギーしきい値における検出効率を得た。この結果より、採用した方法で低中性子感度を達成できることがわかり、また、シミュレーションからの結果と比べることでその妥当性を示すことができた。 2.陽子に対する反応 高エネルギー加速器研究機構の陽子加速器のテストビームライン(T1 ライン)で、陽子を入射してその反応を測定した。これにより、核反応二次粒子によって中性子が検出されてしまうメカニズムを推測することを目的としている。重要な点は、前項の施設では測定できないエネルギー領域での情報が得られることである。測定は運動量領域0.6-2.0GeV/cで行なわれ、その結果はシミュレーションとよい一致を見た。したがって中性子においてもシミュレーションによる推測が正しく機能するということに結びつけられる。
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