研究概要 |
2000年2月に打ち上げ予定であったAstro-E衛星には、世界初のシリコン温度計を用いたX線カロリメータXRS検出器が搭載されていた。XRS検出器は、HgTeをX線吸収体、Si温度計を検出部とするピクセル32個で2.5×5.3mm^2をカバーする。ADRを用いたデュワー中で60mKまで冷却して用い、X線望遠鏡と組み合わせた場合に、0.3〜10keVの範囲で感度を持つ。エネルギー分解能は、7keVでFWHM12eV以下を目標としていた。検出器の開発は宇宙科学研究所及び、米国NASA/GSFCで行なわれた。本研究では、日本でのXRS検出器の地上較正実験および性能試験に参加、試験および較正データの解析を行なった。外部からのX線照射、内部較正用線源を用いた試験の結果、エネルギー分解能として、3keVで8-9eV,8-15keVの高エネルギー側でも11-13eVが達成できていることが明らかになった。これはX線カロリメータのFET読みだし+デジタルフィルタリングによる信号処理が、設計通りに機能したことを示している。またゲインの温度依存性は数%/mKであった。研究代表者は、ASTRO-E衛星の打ち上げ直前までXRSに付いてデュワーの冷却作業や解析ソフトの開発等を行ったが、残念ながら、ASTRO-E衛星は1段ロケットの不具合により地球周回軌道に投入することはできなかった。本研究費にでは、大容量の較正データの解析用に高性能のパーソナルコンピュータやハードディスクなどの記憶装置などを購入し、活用した。
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