2000年2月に打ち上げ予定であったASTRO-E衛星は、1段ロケットの不具合により地球周回軌道に投入することはできなかったが、それに搭載されたXRS検出器は、世界で初めてのシリコン温度計を用いたX線カロリメータとして0.3-10keVの範囲で約10eVのエネルギー分解能を達成していた。我々は、それよりも更に高いエネルギー分解能を達成する可能性をもつ検出器として、超伝導遷移端での急激な抵抗変化を利用して入射光子のエネルギーを測定するTES型カロリメータに着目して、その開発を行なった。 今年度においては、特に都立大の希釈冷凍機中に早稲田大学でプロセスを行なった素子に吸収体として0.5mm角のスズ箔をエポキシ接着剤で張りつけた素子を用い、セイコーインスツルメンツ社のdc-SQUIDと組み合わせることでX線の検出を行なうことに成功した。 現状でのエネルギー分解能は100eV程度であるが、その原因は主にSQUIDの読み出しノイズおよびベース温度の揺らぎに寄るものと考えられ、今後、改善を行なっていく予定である。 この結果については、主に修士論文としてまとめられ、天文学会、物理学会、電気学会などの国内の学会で発表を行なったほか、X線天文に関する国際学会においてもポスター発表を行なった。 また、本研究費については、コネクタなどの実験用部品の購入や、データ解析/論文作成などに使用するプリンタの購入を行ない、十分に活用されたことを付記しておく。
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