銀河団における高温ガスおよびダークマターの物理過程を理解するために、本年度は、主に二つの方向から研究を行った。 一つ目として、最近の観測により明らかにされたX線領域での銀河団からの非熱的放射に注目をした。この放射は銀河団の動的な進化の側面と密接な関連があると考えられ、その性質を理解することが重要であると思われる。本年度はその起源として、高エネルギー粒子を考え、その存在が銀河団の高温ガスにどのような影響を及ぼすかを調べた。また、高エネルギー粒子によるガンマ線放射の強度を評価し、将来のガンマ線観測衛星による観測可能性を議論した。本研究の内容は、平成12年3月に行われた基研研究会「観測的宇宙論における諸問題」において本研究者が、平成11年度秋期日本天文学会において共同研究者が発表を行い、現在、投稿論文にまとめているところである。来年度は本研究を継続して行い、高エネルギー粒子の生成機構の解明を目指す。 二つ目は、銀河団の高温ガスへの銀河、あるいは活動銀河核の影響を調べることを目標とし、そのために必要となるダークマターのハローの形成、進化と銀河、活動銀河核の形成、進化を同時に考察する準解析的方法の数値計算コードの開発を行った。本年度は、そのコードを用いて予備的な結果を得ることができた。その結果は、平成11年度秋期日本天文学会において共同研究者が発表を行っている。来年度は、このコードを用いた計算を行い、銀河団の高温ガスへの銀河、活動銀河核の影響を調べる予定である。 本年度は、備品としてノートパソコンを購入し、数値計算コードの作成、データの処理、プレゼンテーション用図表の作成に使用した。
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