ケミカルポテンシャルによる質量変化率(質量をケミカルポテンシャルで微分した量)をメソン(擬スカラー、ベクター)に対して格子QCD計算によって求めた。ケミカルポテンシャルはアイソスカラータイプ(μ_d=μ_d)とアイソベクタータイプ(μ_d=-μ_d)の2種類を定義して、それぞれの質量変化率を求めた。当初、1次の質量変化率(1階微分量)を計算したが、この値は非常に小さく、ゼロとみなせることが分かった。そこで2次の質量変化率を計算し、以下のことが分かった。 (1)擬スカラーメソンの質量変化率 アイソスカラータイプに対する質量変化率は閉じ込め相では小さく、非閉じ込め相では大きい。これはゼロ温度では擬スカラーメソンは南部・ゴールドストンボゾンであり、その性質を保つため閉じ込め相では小さくなっているが、非閉じ込め相ではその性質はなく、大きな値となっていると考えられる。一方、アイソベクタータイプに対する質量変化率は閉じ込め、非閉じ込め相とも負の値で有限の大きさに留まっている。これは、アイソベクタータイプは南部・ゴールドストンボゾンの制限がなく、大きな値となっているものと思われる。 (2)ベクターメソンの質量変化率 ベクターメソンに対してはまだ統計量が足りなく、計算を進めているが、次のような傾向が見られる。閉じ込め相ではアイソスカラータイプに対する質量変化率は正の値であり、アイソベクタータイプに対しては負の値である。非閉じ込め相では特徴がフリークォーク計算と似ており、ベクターメソンは非ハドロン化していると思われる。
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