1999年2月より開始されたK2K実験では6月のスーパーカミオカンデでの劇的な人工ニュートリノ事象の観測をはじめとして多くの成果をあげつつある。とりわけ本申請研究に関してKEK内前置検出器(シンチレーティングファイバー飛跡検出器)において、反応シミュレータ開発の基礎データとなるGeV領域ニュートリノ反応を、99年末現在までに数百事象観測することに成功し、とくにミュー粒子と陽子との識別可能性については99年秋の日本物理学会分科会で申請者が報告を行うことができた。また本研究にそい申請者が中心となって進めてきたデータ解析および検出装置シミュレーションソフトを用いたプレリミナリーな解析成果はINSTR99国際会議(研究成果欄参照)などでK2K共同研究者による発表が行われた。現在解析ソフトのトラック数ごとの反応別分類、特に陽子トラック識別を調整しており、成果を本春物理学会で発表の予定である。以上の成果により、K2K実験前置検出器による観測を精密に解析するツールおよび検出器シミュレーションソフトの開発はほぼ終え、新年度ニュートリノ核反応の詳細なシミュレーション調整を行う技術的素地を整えることができたと考える。新年度からは解析ソフトウエアに関する論文の作成と併せ、本研究の主目的である反応シミュレータの調整を本格化する予定である。また、多重パイ中間子生成過程シミュレーション開発に関連して、CERN Cristall Barrel実験のデータにおける多重パイ中間子生成の解析を行い、成果がイタリア、中国での国際会議において共同研究者により発表され反響をえたことを付記しておく。
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