本研究の目標は、フェムト秒レーザーの高次高調波でアルカリハライド結晶の内殻を励起し、内殻励起の緩和ダイナミクスを実時間で観測し解明することである。今年度は、まず、繰り返し1kHzピーク強度0.6TWのフェムト秒レーザーを用いて高次高調波を発生して内殻からの発光を観測し、アルカリハライド結晶の内殻を励起できることを確認した。この結果、これまで繰り返し10Hzであった高調波の強度を1秒あたり約100倍にすることができた。これらの成果を平成11年8月に大阪で開かれた発光国際会議で口頭発表した。ついで、今年度の計画である、高次高調波を励起源とするカーシャッターを用いたフェムト秒時間分解発光分光装置の製作を行った。まず、性能評価のため色素のクマリン480を用いて実際に測定を行い、実際に発光の時間波形が測定できることを確認した。ついで、発光寿命が長いCsCl、BaF_2で時間分解波形を得ることを試みたが、残念ながら成功しなかった。その原因として光学系にレンズを用いたことが挙げられる。内殻からの発光は紫外領域にあるため目視で光学系を調整することは不可能である。そのため色素からの発光を用いて調整しているが、レンズを用いているため色収差が大きくでてしまい、光の損失が多くなっているためと考えている。そのため、反射光学系に変えて実験を行うことを計画している。また、カーゲート法では予想以上に偏光子での光の損失が大きいため、差周波発生法による発光の時間分解法を検討し実験を始めている。
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