イオン注入、紫外光照射による可視発光シリコンクラスター構造制御と発光素子への応用

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11740171
• 研究機関: 愛知教育大学
• 研究代表者: 岩山 勉 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (70223435)
• キーワード: 半導体 / ナノクリスタル / イオン注入 / 可視発光 / シリコン / 二酸化シリコン / 酸化効果 / 界面

研究概要

本研究は私たちの研究グループがはじめて報告し、最近特に注目されているイオン注入法によるシリコンナノクラスターの二酸化シリコン中での形成とその物性、特に発光特性、さらにはその微細構造との相関を中心とした。以下で本研究で実施した内容を記載する。
1.シリコンナノクラスターの構造の均一化: 注入時の基板温度を厳密に制御し、さらに加速エネルギーを変化させ(6段階)シリコンを多重注入することにより注入イオンが深さ方向に対して近似的に方形的な分布を持つ試料を作製した。注入後の試料のRBS測定、断面TEM観察の結果、過剰シリコンが試料内に均一に分布し、シリコンナノクラスターが熱処理後形成されることがわかった。さらに、これまでのポーラスシリコンを中心とした研究ではシリコンナノクラスターの「サイズ」と「クラスター密度(クラスター間の距離)」を独立に制御することが不可能であったが、イオン注入法によりこれらのファクターを独立に制御可能であることがわかった。
2.シリコンナノクラスターの発光機構の本質的な解明: 発光のシリコンイオン注入量、注入後の熱処理時間、励起波長依存性、酸化効果、さらにはそれらと注入層の微細構造の相関を詳細に調べた。その結果、発光のピークエネルギーは熱処理時間、励起波長にはほとんど依存せず、高濃度注入時に注入量に強く依存することがわかった。また、シリコンの酸化に伴い発光のピークエネルギーが高エネルギー側にシフトすることもわかった。これらの結果と(1)の構造評価の結果からフォトンがバンドギャップの広がったシリコンナノクラスターにより吸収され、発光はナノクラスターと二酸化シリコンの界面の部位で起こり、さらにそのエネルギー準位はクラスター間の相互作用、界面の酸化状態により強く影響を受けるとする新たな発光のモデル(Interactive Nanocluster Model)を提唱した。

研究成果

• [文献書誌] T.S.Iwayama: "Optical properties of interacting Si nanoclusters in SiO_2 fabricated by ion implantation and annealing"Nucl.Instrum.Methods B. 147. 350-355 (1999)
• [文献書誌] T.S.Iwayama: "Light emission from ion beam induced silicon nanoclusters in silicon dioxide : Role of cluster-cluster interactions via a thin oxide"Nucl.Instrum.Methods B. 148. 980-985 (1999)
• [文献書誌] T.S.Iwayama: "Mechanism of photoluminescence of Si nanocrystals in SiO_2 fabricated by ion implantation : the role of interactions of nanocrystals and oxygen"J.Phys.: Condens.Matter. 11. 6595-6604 (1999)
• [文献書誌] C.E.Chryssou: "Evidence of energy coupling between Si nanocrystals and Er^<3+> in ion implanted silica thin films"Appl.Phys.Lett.. 75. 2011-2013 (1999)
• [文献書誌] T.S.Iwayama: "Characteristic photoluminescence band in Si^+-implanted SiO_2 grown on Si wafer"Microelectronics Reliability. (in press).
• [文献書誌] T.S.Iwayama: "Correlation of the optical properties with the microstructure of Si nanocrystals in SiO_2 fabricated by ion implantation"SPIE Proceedings. (in press).