内殻電子励起に由来する表面ダイナミックスの研究は、未開拓の基礎科学として重要であるばかりでなく、光化学、表面分析、放射化学、材料工学など、関連分野にも貢献するものと期待されている。本研究では、表面分子に放射光を照射したときに放出される電子とイオンを、電子のエネルギーを選別し、イオンの質量も選別して、同時に検出する手法(電子-イオン・コインシデンス分光法)を用いて、シリコン(111)単結晶表面上に吸着したフッ素(F/Si(111))について研究を行ない、 1)フッ素が結合した表面シリコンのSi:2p内殻電子をイオン化すると、フッ素イオン(F^+)が脱離する、 2)フッ素が結合していないバルクシリコンのSi:2p内殻電子をイオン化しても、フッ素イオンは脱離しない ことを見出した。この結果は、フッ素イオン脱離が表面シリコンのSi:2p内殻電子イオン化に由来することを明らかにしている。
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