従来変形ブリッジマン型装置として、常時加圧式で開発されてきた装置を、クランプ式に改造し、実際に使用することが可能であるかどうかを確認するのが今年度の研究計画であったが、その計画は無事に遂行することができた。具体的には、圧力装置を3組ほど試作し、それを用いて実際に低温下で圧力発生が可能か、また発生している圧力の静水圧性はどの程度のものか、を検証し確認することが出来た。 圧力発生部の寸法その他の最適化はとりあえず必要ないと考えて、必要と思われる25トン程度の荷重に耐えうるクランプ可能な構造を設計した。実証実験として、低温において発生している圧力値、および、圧力分布の大きさ、静水圧性の良否を判断するために、鉛のサンプルにコイルを巻いたものを加圧し、鉛の超伝導温度、転移に要する温度の幅などを交流帯磁率測定によって測定した。結果、5.5万気圧程度まで加圧を行ったが、常圧における超伝導転移に比してまったく転移温度幅に遜色のないシャープな転移の信号が得られた。このことは、5.5万気圧に至るまで、非常に静水圧性の高い圧力発生が実現されていることを意味する。希釈冷凍機温度まで冷凍可能な小型の圧力発生装置としては、今までに全くない性能を有していることが証明できた。また、超伝導転移温度から、低温下での発生圧力の見積もりを行うと、室温での設定圧力に対して2割程度の系統的な圧力の減少が見られた。これは圧力媒体の熱収縮に関するもので、その低減が今後の課題となった。現在は、既に検証実験から実際の試料に対する測定に移行している。ラダー系超伝導体Sr_2Ca_<12>Cu_<24>O_<41>の超伝導臨界磁場Hcの軸依存性の測定の実験を行っており、軸方向による目覚ましいHcの違いや、微妙な圧力の変化に応じて目まぐるしく変わる物性の様子が明らかになっている。このような実験は今までには実現が難しかったものである。
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