本研究は、単一スレータ積を越えた一般の多体電子状態を媒介とした密度汎関数法の新たな定義に基づいて、磁性不純物問題等の多体問題に対する第一原理的電子状態計算を行うものである。具体的には、バンド計算で用いられる擬ポテンシャル法の拡張と、数値繰り込み群法といった多体状態の解法を組み合わせることにより、重要な多体効果を露わに取り入れた電子状態の決定法を定式化する。この定式化に基づく数値計算を行うことで、f電子系における近藤効果などの多体効果を表現する第一原理的電子状態計算法を実現するのである。2年間の研究の初年度では、プログラム開発を中心に研究を行った。 1 スピン依存擬ポテンシャル作成プログラムの開発:スピン散乱を表現できるスピン依存擬ポテンシャルの作成プログラムを開発した。ここでは、原子に対するDirac方程式を局所スピン密度近似の範囲で自己無撞着に決定し、Ce等の磁性イオンの多重項決定を行い、さらに各軌道の波動関数及び擬波動関数の決定、擬ポテンシャルの作成を行った。 2 多体問題解法プログラムの開発:不純物近藤問題を数値的に解くため、Wilsonによる数値繰り込み群法を応用したプログラムを作成した。これにより、多電子基底状態と局所電子密度が得られた。これらを統合して、球対称場を仮定した場合の解法プログラムの整備を行った。 12年度は、固体中での計算を自動的に行うために、平面波展開法を応用してスピン依存擬ポテンシャルを導入した場合の電子状態最適化プログラムを開発し、CeB_6等の物理系に応用していく予定である。プログラム開発は11年度に導入したワークステーション上で行った。
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