本研究は、巨大磁気抵抗(CMR)などの性質から将来様々な分野への応用が期待される層状ペロフスカイト型マンガン酸化物について、直流電気伝導や遠赤外光学応答といった低エネルギー電荷励起の面からその特異な金属状態を理解し、その成果をもとに物性制御指針を得ることを目的としている。初年度である平成11年度は、主として測定系の整備、高品位単結晶の作製と電気抵抗率による評価、予備的な光反射率の測定を行い、以下の成果をおさめた。 (1)現有のフーリエ分光器光学系を、自動化(遠隔操作化)・デジタル化し、微小試料についても光反射率の精密な温度変化測定を可能にした。 (2)代表的なCMR物質である、La_<1-x>Sr_xMnO_3の低キャリア濃度(x=0.175)について、理想的な試料表面である劈開面を用いて、精密な反射分光実験を行った。その結果、従来報告されていたマンガン酸化物強磁性金属相における「極端に小さなドゥルーデ・ウェイト」が、研磨にともなう試料表面の劣化による実験的な誤りであり、正しい振動子強度は比熱やホール効果などの実験結果と矛盾しない、大きなものであることを明らかにした。 (3)La_<1-x>Sr_xMnO_3のMnサイトを系統的にAlで置換した一連の単結晶試料作製に成功した。この成果はすでに国内外の学術的会合で発表している。この単結晶試料を用いた光反射率そのほかの測定は現在進行中であり、来年度中には学術誌に成果を発表する予定である。
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