1、絶対零度におけるモット転移近傍の臨界的振舞い 空間次元無限大で厳密となる動的平均場理論は、フェルミ液体とモット絶縁体をともにコンシステントに記述する理論として、広くモット転移の研究に用いられている。しかし、絶対零度のモット転移点の近傍ではエネルギースケールが非常に小さくなるため、数値的に解を求めることが困難となる。モット転移を記述する解析的理論として、準粒子ピークを関数で近似した線形動的平均場理論がある。1バンドハバード模型に対するモット転移点の解析的な結果は、厳密対角化法などの数値計算の結果と非常によく一致する。この理論を用いて2バンドハバード模型の金属絶縁体転移の相図を求め、モットハバード型と電荷移動型領域を含む金属絶縁体転移の全貌を明らかにした。さらに1バンドハバード模型のモット転移近傍の臨界的振舞いを調べ、準粒子繰り込み因子、圧縮率、電子の二重占有数、局所帯磁率などの物理量を、相互作用と電子数密度の関数として解析的に求めた。 2、有限温度におけるモット1次相転移と相分離 有限温度ではモット転移が1次相転移としておこることがIterated perturbation(相互作用の2次摂動の近似)により示されていたが、近似の問題やドープした場合に適用できないなどの問題がある。そこで数値的厳密対角化法を用いてこれらの問題を調べた。ファインマンの関係式を利用して金属及び絶縁体の自由エネルギーを計算し、ハーフフィルドにおいて有限温度のモット1次相転移点を決定した。さらに同様の計算をドープした場合にも行い、ある臨界ドーピング濃度でモット転移が1次相転移としておこること、また臨界濃度以下では金属と絶縁体の2相分離がおこることを示した。
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