珍しい高原子価のFe^<4+>を含む酸化物においてFe^<4+>がFe^<3+>(Fe^<4-δ>)とFe^<5+>(Fe^<4+δ>)に分かれるという「電荷分離」現象を示すことが、その^<57>Feメスバウアー分光測定から知られている。ペロブスカイトおよび関連構造を持つ高原子価Fe酸化物に対し、Aサイトのアルカリ土類、希土類金属の置換による電荷分離の発現温度あるいは発現の有無に対する効果を系統的に調べ、電荷分離の原因・発現機構を明らかにすることを目的として、BaFeO_3とSrFeO_3の固溶体系Ba_<1-X>Sr_XFeO_<3-y>(BSFO(x)と略記)に注目した。 BSFO(x)のBa-rich側において酸素分圧700気圧で合成したところ、Srの濃度(x)により敏感に物性が変化しBaFeO_<3-Y>(BFO)とBaを10%Srで置換したBSFO(0.1)では、^<57>Feメスバウアースペクトルおよび磁化の温度変化が大きく異なること、さらにSr濃度を大きくしたBSFO(0.2)では六方晶から立方晶に変化することを明らかとした。酸素欠損を減少させる目的で、BSFO(0.1)をさらに高圧の酸素分圧>1000気圧合成し、低温において(BFOと同様)電荷分離を起こすことを明らかにした。 一方Sr-rich側ではSrFeO_3のSrサイトをBaで置換すると、少なくとも30%Ba置換までは立方晶のまま格子定数が増大する。これは粉末X線回折図形をWPPD法を用いて格子定数を精密化することにより行った。この格子定数の増加はFeO_6八面体の膨張すなわちFe-O距離の増加に対応する。それに伴いメスバウアースペクトルにおけるFe^<4-δ>とFe^<4+δ>の内部磁場(5K)の差異が大きくなり、電荷分離を起こさないSrFeO_3(SFO)からSrを30%Baで置換したBSFO(0.7)へと電荷分離の発現がより顕著となることを明らかとした。
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