研究概要 |
1.UPd_3における四極子転移の研究 UPd_3における四極子転移のオーダーパラメータを明らかにする目的で純良単結晶における帯磁率,磁化,室温までの熱膨張,及び15テスラまでの磁歪測定を行った.転移点以上の高温域での帯磁率,熱膨張の振る舞いは四極子O_2^0の四極子間相互作用を考慮した結晶場モデルでよく説明されることが明らかになった.また転移温度の磁場依存性を測定し,単結晶における磁場-温度相図を作成した.その結果四極子転移に起因すると思われる転移は磁場印加とともに高温側へシフトしていくことがわかった.また六方晶のc軸方向では複雑な磁気相図が得られ,磁気転移と四極子転移が複雑に絡み合っていることが示唆された.これらの相図と中性子散乱実験で示唆されている四極子の対称性(空間的構造)をうまく説明できるモデルを現在検討中である.(一部の実験結果はすでに投稿済み,論文準備中) 2.UGa_2の構造相転移と磁気転移 UGa_2は六方晶の結晶構造を持ち,約122Kで強磁性転移すると共に,この磁気転移点以下で格子が僅かに斜方晶にひずむことが知られていた.熱膨張測定では強磁性発生に伴い大きな自発体積磁歪と思われる歪みが低温で観測された.また転移点以下約100Kに熱膨張異常を発見した.この異常は超音波測定にも反映されるが,この温度以下で六方晶面内の帯磁率に異方性が生じることから面内のスピン構造の変化に起因するものではないかと考えられる.(論文準備中) 2.PrSn_3における近藤効果 PrSn_3の電気抵抗測定では約40K以下で近藤効果を連想させる電気抵抗の上昇が観測されていた.Ceを含むいくつかの金属間化合物ではコヒーレント近藤状態の出現による体積(格子)の急激な収縮が観測されるが,PrSn_3ではそのような現象は観測されず,熱膨張からは近藤効果の明確な証拠は得られなかった.
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