研究概要 |
磁気秩序を示す物質の中には圧力を加えると,磁気秩序相が抑制されるとともに重い電子状態が発達し,磁気秩序相が消失する臨界近傍で超伝導状態が現れることが見い出された.本研究では,これらの物質がどのようにして磁気秩序状態から圧力誘起の重い電子状態に移り変わるのかを明らかにするために,加圧下でドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果を観測する装置を開発し、dHvA効果によりフェルミ面や伝導電子の有効質量などの電子状態の変化を探ることを研究目的とした。そこで、本年度は^3Heクライオスタットや希釈冷凍機に装着できる圧力セルを製作した。本装置により、1.5GPまでの加圧下のもと、20mKの極低温、17Tの高磁場でdHvA効果や電気抵抗を測定することが可能となった。本装置を用いてまず、CeNiのdHvA効果の実験をおこなった。CeNiは加圧により、価数が変化するのではないかと議論されている。本研究の結果、いくつかのフェルミ面の電子の有効質量が変化していることを見いだした。この研究成果については、長野で行われた国際会議SCES'99において発表した。また現在、ネール温度35Kで反強磁性秩序を示すCeRh_2Si_2について研究をおこなっている。この物質は1G・Pの圧力で反強磁性が消失し、超伝導が現れると報告されている。しかし、超伝導は起きないとの報告もあり、まだ確定していない。また超伝導が起きると報告された物質は多結晶であり、純良な単結晶の育成が望まれていた。そこで、本研究ではCeRh_2Si_2の純良な単結晶の育成をおこない、残留抵抗比が約100の単結晶試料を得ることが出来た。これは、従来報告されていた値より約3倍大きく、dHvA効果の信号も以前よりかなり改善された。今後、この試料を用いて、加圧下のdHvA効果や電気抵抗の実験をおこなう予定である。
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